東京高等裁判所 昭和35年(う)400号 判決
被告人 大須賀慶三郎
〔抄 録〕
控訴の趣意第一点及び第二点について。
所論は、(一)被告人は籾山博の選挙運動者ではない、(二)被告人が慶野四郎から収受した金五千円は被告人自身が立候補した田沼町議会議員選挙に対する陣中見舞である、(三)籾山博の立候補の意思は本件当時確定していなかつたというのである。よつて記録を精査するに、原判決挙示の証拠を綜合すれば、本件当時籾山博が栃木県議会議員選挙に立候補を決意していたこと及び被告人の収受した金五千円が所論のような陣中見舞ではなく、籾山博に右選挙において当選を得しめる目的でした投票取纒めの選挙運動の報酬であり、被告人がその情を知つていたことを認めることができ、記録中右認定を左右するに足る証拠を発見することができず、当審における事実審理の結果によつても右認定を覆して所論の事実を認めることができない。次に、原判決挙示の証拠によつては、被告人が籾山博の選挙運動者であつたことを認めることができず、この点で原判決は事実を誤認しているけれども、右は原判決自体によつてはこれを発見することができず、記録と照し合せて初めて発見し得るのであるから理由にくいちがいがあるのではなく、訴訟手続が法令に違反するに過ぎないものと解すべきであり、而も、被告人が栃木県議会議員選挙の選挙人であることは証拠上明らかであり、選挙人であると選挙運動者であるとを問わず、当選を得しめる目的を以てする金銭の供与を受けたときは公職選挙法第二百二十一条第一項第四号に違反するものとして処罰されるのであるから、右事実の誤認及び訴訟手続の法令違反は判決に影響を及ぼすものとはいうことを得ず、原判決は結局正当であることに帰する。以上説示のとおり原判決には審理不尽、理由くいちがいの違法もなく、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認もない。所論は理由がない。
(山田 滝沢 鈴木)